Date:2023年03月11日(土)
Peformer:Les Vants Francias (レ・ヴァン・フランセ)

Les Vants Francias 音楽堂ヘリテージコンサート
ダリウス・ミヨー:フルート、クラリネット、オーボエ、ピアノのためのソナタ op.47
Milhaud: Sonata for Flutem Clarinet, Oboe, and Piano, op.47
ダリウス・ミヨー(1892-1974)
1918年に書かれた「フルート、クラリネット、オーボエ、ピアノのためのソナタ」も、柔らかい響きの背景にさまざまな棘を隠した曲のひとつ。まず第1楽章(静かに)は、オーボエがのどかな旋律を奏でてはじまる。ところが早くも5小節目、フルートが異なる調で合いの手を加えると、なにやらシュールな音風景が現出。第2楽章(楽しげに)は、日本の祭囃子のようなリズムの上で、管楽器がどこか調子の外れたやりとりを続ける。第3楽章(興奮して)は、上行音階が重なりあるなかで音響がつぎつぎに錯綜し、大混乱に陥る過程。そして第4楽章(苦しげに)では、一転しれ曲調は静まり、何やら苦悶に満ちた表情で管楽器が対話を交わす。最後はピアノによる祈りに満ちた和音に辿り着いて全曲を閉じる。
ベートーヴェン:ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調 op.16
Beethoven: Quintet for Piano and Winds, op.16
1976年、まだ20代半ばのルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770-1827) によって書かれた作品。モデルになっているのは、あきらかにモーツァルトの五重奏曲(K.472)。
第1楽章は、柔らかな序奏のあと、ピアノの先導でアレグロ部に入る。主題は簡素だが、各楽器が入れ子のように響きを作ってゆくあたりが作曲者の技術。第2楽章は、可憐なアンダンテ。途中であらわれる短調のエピソードがとりわけ美しい。第3楽章はロンド形式のフィナーレ。やはり時として短調へと傾きながらも、華やかなエンディングへと向かう。
ダンギー:六重奏曲〜ピアノと木管五重奏のための
Eric Tanguy: Sextour
エリック・タンギー(1968ー)
リゲティ:6つのバガテル
Ligeti: Bagatelles
ジェルジ・リゲティ(1923-2006)はルーマニアに生まれ、ハンガリーで育った作曲家。ユダヤ系であった彼は、大戦中に母と弟を強制収容所で亡くしているが、さらに戦後は共産主義化されたハンガリーで芸術の自由を奪われた生活を送った。つまりナチズムとスターリニズムという20世紀のふたつの悲劇を体現したわけだ。その後1956年にウィーンに亡命してからは、前衛音楽の旗手として新しい作品を発表。
「6つのバガテル」は、1953年に完成したピアノ曲(ムジカ・リチェルカータ)を同年に管楽五重奏に仕立てたもの。6曲とも輪郭のはっきりした、ややグロテスクでコミカルな雰囲気を持っているが、もっとも大きな特徴は、4つの高音を用いた第1曲から、11の高音による第6曲まで、曲が進むにつれて音高が増えてゆく点にある。またリゲティの述懐によれば6曲のうち4曲は「疑似民族音楽」的な作品で、第2曲と第5曲はハンガリー風、第3曲はルーマニアとセルビア風、さらに第4曲は広くバルカン半島風のニュアンスを持っているという。
ブーランク:六重奏曲
Poulenc: Sextet
フランシス・ブーランク(1899-1963)1932年に作曲。ブーランクが書いた管楽器のための室内楽のなかでも最も規模が大きく、傑作の呼び声高い作品。言うまでもなくレ・ヴァンセ・フランセの「テーマ曲」でもある。
第1楽章は、仰々しいイントロダクションに続く皮肉な表情の主題、そしてピアノを背景に5つの楽器がまるで即興のようなやり取りを交わす様子が、ブーランクの機知を余すところなく示している。ファゴットの独奏に先導される中間部は奇妙なきらめきが特徴。「ディヴェルティスマン」と題された第2楽章は、ゆったりと各楽器の音色が重ねられたあとで、唐突なほどに明るいホルンの中間部があらわれる。第3楽章はロンドと変奏曲の融合。どこか映画音楽のような雰囲気を醸しだしながら、途中で冒頭楽章の主題を引用しつつ進んでゆき、夢みるような和音に到達して全曲を閉じる。